人手不足やグローバル化で激化する人材獲得競争を背景に、一律の初任給を見直す動きが出てきています。日本の賃金体系は、勤続年数に応じて賃金が上がる定期昇給制度など、これまで年功序列の要素が強いとされてきました。そのため年齢と賃金の関係を示す賃金カーブは右肩上がりでした。しかし近年、人手不足で初任給や若手の給与を引き上げる動きが相次ぎ、賃金カーブが緩やかになりつつあります。
厚生労働省の賃金統計表によれば、1,000人以上の企業で働く40~44歳男性の2018年の平均年収は726万円です。2008年の797万円から71万円減っています。一方で25~29歳は、2008年より17万円増えています。中高年の賃金を抑制し、若手に振り向ける企業が多くなってきています。女性の場合は、管理職への登用拡大などでシニアでも年収が増えた年齢層があります。男性の一般労働者の所定内賃金の年齢別格差は、1990年代半ばをピークに縮小傾向にあります。一律の給与では国際競争力を持てないため、メリハリのある配分が大切になってきます。
(2020年4月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)