大動脈瘤の新しいカテーテル治療

 心臓から全身に血液を届ける太い血管、大動脈がこぶのように膨らむ大動脈瘤は、死に至る破裂を防ぐには外科的な治療が必要となります。大動脈は心臓から出てカーブし、腹部へ達する血管です。脳や両腕、両脚、内臓への血管も、ここから枝分かれしています。動脈硬化などで血管がもろくなり、一部が膨らんだ状態が動脈瘤です。一度膨らむと自然に小さくはならず、大きくなるほど破裂の危険性は高まります。厚生労働省の統計によれば、大動脈瘤および解離で死亡した人は、1994年は5,381人でしたが、2024年には2万427人と30年で3倍以上に増加しています。発症率の高い高齢者の増加がその背景にあります。

 破裂を防ぐには、こぶができた血管を人工血管に置き換える人工血管置換術があります。胸や腹を大きく切ったり、人工心肺を使ったりするため、高齢者にとっては体への負担が大きく、手術できない場合もあります。そのような高齢者に対して、近年血管内治療が普及してきています。カテーテルと呼ばれる細い管を使い、金属バネ付きの人工血管であるステントグラフトを折り畳んだ状態で、脚の付け根を切開してこぶのある血管まで運びます。そこで広げて、血管を内側から補強します。横隔膜より下の腹部大動脈にできた大動脈瘤では、人工血管置換術よりステントグラフトでの治療の方が多くなっています。

 しかし、これまでカテーテル治療の壁とされてきた部位があります。脳や腕へと向かう血管が枝分かれする弓部と、内臓に枝分かれする血管が密集する胸腹部です。こぶが血管の分岐の近くにあると、従来型のステントグラフトでは、分岐を覆って大事な血流を妨げてしまうため使用できませんでした。

 この状況を一変させる新型ステントグラフトが、昨年保険適用されました。それぞれ弓部用(TBE)、胸腹部用(TAMBE)と呼ばれ、予め枝分かれする血管に対応したブランチがついています。これにより、大きく切り開く手術法でなくてもこぶの破裂を防ぐ治療ができるようになりました。かつては手術を諦めざるを得なかった人や、人工血管置換術のリスクが不安な人に大きな福音になります。

(2026年1月20日 東京新聞)
(吉村 やすのり)

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