初任給とは、主に就職して最初に受け取る給与を指します。厚生労働省によれば、2018年春入社の大学卒業者の初任給は、前年比0.3%増の20万6700円と5年連続で増加し、過去最高を更新しました。新卒採用が学生優位の売り手市場となっているのを背景に、人材獲得のため初任給を引き上げる企業が増えています。米国など海外では、必要とされるスキルを持つ人材には、高い給与が提示されます。学生などにとっても高度な能力を身に付けようとの意欲が高まりやすくなります。こうした文化が、成長分野に人材をシフトする効果を生んできました。
これまで、日本では平等を重視し、給与体系も横並びの傾向がみられていました。それが生産性や国際競争力の伸び悩みを招いてきたとも言われています。ソニーは、新入社員の初任給に差をつける取り組みを始めます。人工知能(AI)などの先端領域で高い能力を持つ人材については、2019年度から年間給与を最大2割増しとしています。対象は新入社員の5%程度となる見通しです。デジタル人材の獲得競争は、業界や国境を越えて激化しています。横並びの給与体系の見直しが進めば、より付加価値の高い分野に人材をシフトさせ、日本全体の生産性を高める効果が期待できそうです。国際競争力を保つためにも、優秀な人材を初任給を含めて、脱・横並びで手厚く処遇する動きが今後広がりそうです。
(2019年6月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)