わが国においては、海外諸国と異なり、大学を卒業してせっかく就職しても、結婚・育児を理由に女性は仕事を辞めてしまうことが多いのが現状です。働きたくても働けないのは女性にとっても不幸だし、優秀な人材を生かしきれていないのは、日本経済にとっても大きな損失です。一番の理由は、長時間労働にあります。長く働いてこそ評価される職場環境では、出産・子育てを担わざるを得ない女性にとって不利となります。夫が勤務先に長時間拘束されるために、家庭責任の分担も期待できません。ワ-クライフバランスが取れないので日本女性はリ-ダ-に就こうとしないし、就けない状況にあります。
転勤の多さもワ-クライフバランスの実現を阻み、女性が活躍しにくい状況を作っています。他国でも多国籍企業などは同じ問題を抱えていますが、転勤しなくてもキャリア形成ができるしくみを考えています。日本の労働力人口は、このままだと今後50年で40%も減ります。男性と比べて就業率が低く、力を存分に発揮できない女性に頼らざるを得ない状況にあります。その危機感を政府も社会も共有していかなければなりません。
(2015年9月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)