大学の教育費の支出分布

OECDの報告によれば、大学の教育費を巡り、日本の家計負担の重さが目立っています。日本の高等教育費のうち、学生の家計が負担している割合は52%で、OECD平均である22%の2倍超になっています。
日本は家計負担が52%で、公的支出の33%より多くなっています。家計負担の割合は、比較可能な35カ国のうち、コロンビアの68%、チリの57%、英国の54%に続き4番目に高くなっています。オーストラリアの51%や米国の44%も、OECD平均を上回っています。北欧は国民全体に高い税負担を課す一方、大学の学費を無料としている国が多くなっています。大学レベルの家計負担は、デンマークとフィンランドはありません。スウェーデンの1%やルクセンブルクの2%、オーストリアの3%なども低率です。
日本の国公立大学の年間授業料は、米ドル換算で5,144ドルで、イングランドの1万2,255ドル、米国の9,212ドルなどに続き5番目に高くなっています。私的支出が高ければ、高等教育への参加をためらう学生が出る可能性が出てきます。高等教育費について、日本では保護者が負担すべきだという考え方があります。高等教育を受けていない人や子どもがいない世帯にとって、大学のコストを税金で負担するのは不公平という見方もあります。北欧のような学費無償化は、わが国において社会のコンセンサスを得るのが難しいとの意見もあります。
文部科学省は、2020年度に低所得世帯向けに授業料減免と奨学金を組み合わせた制度を創設しています。さらに2024年度からは、世帯年収などの要件を緩和して支援対象を広げます。授業料が高くなりやすい理工農系に進む学生や、教育費負担がより重い多子世帯への支援を拡充する方向で制度設計を急いでいます。

(2022年10月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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