国公私立大は2024年時点で813校あり、少子化の中でも20年前から15%増えています。既に私大の経営は厳しく、2024年度は地方を中心に四年制私大の59%が定員割れしています。10年後には18歳人口が急減する2035年の崖が迫っており、大学の再編・縮小は避けられない状況にあります。定員充足率が5割を切ると、国からの私学助成金は全額不交付になります。国の助成金を失い、定員減により授業料収入も減る悪循環から脱する手立ては見当たらなくなる私大は増えています。
大学の撤退により懸念されるのが地方経済への悪影響です。地方から大学がなくなれば地元への人材輩出が止まり、進学先が多い都市部への若者の流出が速まるおそれが出てきます。全国に800ある大学が直面する大淘汰の時代に入っています。大学が無くなれば地域の活力は必然的に落ちてしまいます。
ダムが決壊するように、地方私大の淘汰は一気に進みます。地域に求められる人材を育成し、若年層の人口流出も食い止めるといった重い役割を自認する大学だけが崖を乗り越えられえることになります。地域経済を守るためには、大学と自治体、企業が早めに手を組むことが重要な処方箋になります。

(2025年3月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)