大学の研究力低下

日本の研究力が低下しています。引用数がトップ級の論文数は、中国などが伸びる一方、日本は徐々に下がってきています。研究の質を測る指標として、世界の研究者から引用されることの多い論文数でみると、科学技術予算を積極的に増やしている中国や安定的な研究資金を確保するドイツは、質の高い論文数を増やしています。一方、日本は国立大学を独立行政法人化し、人件費などに使われる基盤的経費を減らし始めた2004年頃から低下傾向にあります。
1990年以降、政府は選択と集中で、競争的研究資金に力を入れてきましたが、大型の研究プロジェクトであっても数年で終わるため、研究者が大学で安定したポストにつきにくくなったことも原因の一つになっています。若い研究者の多くが最初に職を得る可能性が高い地方大学にも、資金を回すことが大切です。また、運営費交付金でまかなってきた大学の人件費や施設費などを、競争的資金からも出せるようにして間接経費を確保したりする仕組みも必要です。国の歳入が伸びず、大学への研究費を大幅に増やしにくい中、民間企業からの投資も使って状況を打開しようとしています。研究費の確保のため、企業の下請け化が進んでしまうことも懸念されます。

(2018年5月3日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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