経済産業省の調べによれば、大学発スタートアップが1年間に200社新設され、累計で3,300社を超えています。増加数は慶應義塾大学が首位で、大学系ベンチャーキャピタルが起業を支援しています。2位は岐阜大学です。裾野が広がる一方、新規株式公開に至る企業は少なく、さらなる活性化には持続的な成長戦略がカギとなります。
2015年に改正された学校教育法は、大学の役割として、教育と研究に加えてイノベーション推進を新たに定めています。これをきっかけに起業を後押しするファンドや制度が広がっています。大学側も研究成果が種のまま埋もれてしまうことへの危機感が強くなっています。
着実に裾野が拡大する大学発スタートアップにとって、中長期の成長戦略をいかに描くかが課題になります。経済産業省の調査では、2021年度に株式公開を果たしたのは、東北大学発のレナサイエンス1社にとどまっています。起業を促す環境整備だけでなく、事業拡大に息長く伴走する枠組みが求められています。
(2022年5月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)