大学ファンドの制度設計

日本の研究力がいま、低下傾向にある中で、世界トップレベルをめざす大学を支援する10兆円規模の大学ファンドの制度設計が大詰めを迎えています。支援対象となる特定研究大学(仮称)は、応募をもとに国が審査して数校を指定します。支援額は1校あたり最大で年数百億円とかなり大きなものです。科学技術振興機構に設置するファンドの運用を今年度内に始め、2024年度から実際に支援が始まります。

制度創設の背景には、日本の研究力の低下への危機感があります。研究力の指標の一つである引用回数が上位10%に入るトップ10%論文数で、日本は2000年代半ばまで世界4位を維持していましたが、年々順位を下げ、最新の2018年では10位に転落しています。主要7カ国(G7)では最下位です。最新の大学ランキングで、200位以内の日本の大学は、東京大学(35位)と京都大学(61位)の2校だけです。
ランク上位の米英の大学では、この20年で研究資金を大幅に増やしてきています。その原動力が、寄付や産学連携の資金などをもとにした大学独自の基金です。数兆円を運用し、年数千億円を稼ぐ大学もある中、日本の大学の運用規模は多くても数百億円で、差は大きなものがあります。そこで、政府は昨年、米英のトップ大学に負けない10兆円規模の官製大学ファンドの創設を決めました。

(2021年11月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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