大学医学部の地域枠

 医学部に地域枠が導入されたのは1990年代後半です。それが2006年度以降、急速に広がりました。その背景にあるものは、2004年度以降に始まった新臨床研修制度です。それまで医師は出身大学の医局に入り、附属病院で研修することが多かったのですが、新制度では全国どこでも研修先に選べるようになり、大都市の病院に人気が集まりました。医師のレベルアップや医局の弱体化を狙った新制度には、偏在を助長する問題点がありました。
 地方における医師の減少に対し、都道府県は医師を確実に確保できる地域枠を導入しました。15年度には全国の医学部の9割に当たる70大学に広がり、定員は計1500人を超え、全体の2割弱を占めるようになってきています。今後、地域枠の学生が地域医療を守るために寄与することが期待されています。しかしながら、この地域枠の医学生が長きにわたって地域に定着するかどうかが今後の課題です。欧州では地域ごとに診療科や医師数の割り当てる国もありますが、医師の権利を制限するおそれがあり、日本での導入については、慎重論が多いのが現状です。

(2016年3月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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