大学受験の壁

 経済的な理由で進学できない学生を支援するため、大学授業料の免除や奨学金制度が近年は広がっています。しかし奨学金は入学後に受け取ることが多くなっています。受験料のほか、入学金、教材やパソコン購入費など、困窮家庭にとっては入学前に必要な資金を手元に用意すること自体が高いハードルになります。

 キッズドアの母子家庭など1,160世帯へのアンケート調査によれば、高校生以上の子どもがいる465世帯のうち、9割以上が家庭の経済状況が大学受験や進路選択に影響すると答えています。受験費用の準備手段について、借り入れと回答した世帯が6割を超え、このうち3割が銀行やクレジットカード、消費者金融のいずれかを選んでいます。

 こども家庭庁は、2023年度からひとり親家庭などの子どもの受験を支援する事業を始めています。住民税非課税世帯などの高校3年生を対象に、受験料を5万3千円、模試費用として8千円を上限に補助しています。受験料や入学金に加え、近年は学習塾代なども子どもの教育費の多くを占めています。文部科学省の調査によれば、公立高に通う子どもの2023年度の学習費は59万8千円で、そのうち3割が学習塾や家庭教師などの補助学習費でした。

 キッズドアの調査によれば、家庭の経済状況が受験に与える影響として、塾・予備校に通うことができないが75%と最も多くなっています。困窮世帯は、受験準備や学びのフォローアップを受けられる機会そのものが乏しいと思われます。

(2025年3月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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