大学進学支援制度の周知

2020年度から高等教育の修学支援制度が始まっています。この制度は、大学・短大・高専・専門学校などの学生を対象に、授業料減免と給付型奨学金によって低所得層の支援を行うものです。両者合わせて1人当たり最高年額約190万円、予算規模で約5,800億円という大型の制度です。
非課税世帯に当たる家計年収275万円以下の世帯の進学率は、2016年度の調査では52.1%、2020年度の調査では61.5%と9.3ポイント増加しています。新制度は一定の進学促進効果があったとされています。また、対象世帯の大学進学者の自宅通学率は、2016年の71.4%が、2020年には64.4%と7ポイント減少しています。新制度によって費用負担が軽減され、自宅外の進学が可能になった者が増えたと考えられます。しかし、高校卒業後就職した者のうち、経済的に進学が難しかった者は、まだ対象世帯の半数の50.0%、年収388万円以下の一部支援の世帯でも46.6%に上っています。
新制度が対象者に知られていないという情報ギャップの問題があります。修学支援制度は、家計事情による進学断念をなくすのが狙いなのに、対象世帯に制度を知らない人が多くいることは問題です。新制度は5,800億円以上の巨費を投じているのに、高校や高等教育機関への支援、あるいは日本学生支援機構の情報提供などのインフラ整備が十分ではありません。
新制度は始まったばかりですが、課題は山積しています。新制度の対象から外れた中間所得世層をどう支えるか、国立大学と違い私立大学は新制度の支援だけでは授業料をカバーできないという、国私間の差を放置してよいかなどの問題も残ります。

(2021年6月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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