文部科学省のアンケート調査によれば、昨年度に大学院修士課程を終えた学生の16.5%が、奨学金などの借入金を300万円以上抱えているとされています。金額は理系の方が高い傾向にあります。在学中から経済的な自立を迫られることもあって、博士課程への進学率は激減しています。
大学院は、授業料だけで少なくとも年50万~80万円程度かかります。修士課程を終えて博士課程に進む学生は、2000年度の16.7%から激減し、2020年度は9.4%まで低下しています。科学立国を担う人材基盤の衰えが心配されています。調査によると、授業料の減額や免除の措置を受けたのは22.6%で、減免額は30万円以上60万円未満が7.5%と最多で、文系の方が減免を受ける割合が高くなっています。就職した学生に理由を尋ねると、生活の経済的見通しが立たないが38.3%、進学後の就職が心配が32.5%との回答が目立っています。
貸与型奨学金などの借入金があるとしたのは全体の35.9%で、借入額は300万円以上が最多でした。分野別では、医学、薬学を含む保健で300万円以上が22.9%、工学・理学が17.1%と続いています。
経済的に苦しい学生は、国や自治体、民間団体から奨学金などの支援を受けられます。返済不要の給付型、無利子の貸与型もありますが、多くは利子を含めた返済が必要で、事実上の借金として若者に重くのしかかっています。研究職などを除けば、多くの企業では年齢が高い大学院修了者は敬遠されがちです。高学歴でも給与水準に大きな差がつくことは少なく、収入に直結していません。
(2021年7月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)