大腸がんは、国内で毎年15万~16万人が新たに診断され、部位別では最も多いがんです。2022年の死亡者数は約5万3千人と、肺がんに次いで2番目に多くなっています。大腸がん検診は、便検査で精密検査が必要な人をふるい分けし、その後に内視鏡などで詳しく調べるのが一般的な流れです。2005年のガイドラインでも便検査が推奨されています。
国立がん研究センターが、大腸がんの新しい検診ガイドラインを公表しています。便検査は、大腸がんがある人を正しく陽性と判定する感度が84%、大腸がんがない人を正しく陰性と判定する特異度が92%でした。ふるい分けに使うことで、大腸がんの死亡率を下げるという科学的根拠もあり、検診での利用を改めて推奨としています。推奨年齢は40~74歳です。
近年、便検査を経ずに最初から内視鏡検査をする例も増えているため、内視鏡検査のみでの検診についても再検討しています。その結果、ふるい分けに便検査を使う方が費用対効果は高く、内視鏡検査だと下剤で腸を空にするなど体への負担もあり、多くの住民を対象に自治体が行う検診としては、実施しないことを推奨しています。しかし、内視鏡検査そのものは正確で、ポリープなどが見つかれば切除できる利点もあります。
(2024年1月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)