女性は、生理的ライフステージによって、ホルモン状態が大いに変化する。エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの変化に伴ってさまざまな病気が発生する。
それら病気の概念は医学の進歩により、また時代とともに変化しうる。病態の解明や新しい治療法の開発などにより、疾病の診断および治療のみならず、予防といった新たなツールを提供することができるようになってきている。この新たな治療技術や科学手法の開発には安全性、経済性のみならず倫理的妥当性も評価されなければならない。また、近年女性の社会進出が進み、妊孕性を考える時、子宮内膜症や子宮筋腫などの良性疾患の存在のみならず、子宮頸癌などの悪性腫瘍の存在を考えなければならなくなってきている。
子宮内膜症は生殖年齢にある女性の約10%に発生し、女性のプライマリケアの立場からも重点的に取り組む課題となっている。特に、子宮内膜症を中心としたさまざまな子宮疾患は妊孕性を低下させ、少子化を助長するという新たな社会的問題を提起するだけではなく、治療に要する医療コストや月経痛に伴う休業などによる労働損失は、産業、経済的にみても看過できない大きな問題となっている。
臨床医は医療技術の進歩ばかりではなく、その診療の基盤となる科学的エビデンスに注目し、臨床にあたらなければならない。今や産婦人科は女性の生涯を通じてその健康に奉仕する女性医学としての性格を有するようになってきている。日常診療においてもいずれの領域であっても高いエビデンスに基づいた診療が要求され、治療の標準化が叫ばれ、診療の指針となるガイドライン作りが盛んに行われるようになってきている。
(吉村 やすのり)