月経困難症や月経前症候群(PMS)など月経に伴う様々な障害は、我慢するものという思い込みが女性たちを苦しめています。ピルを服用するなど適切なヘルスケアを知り対処できれば、女性活躍の機会が高まります。わが国の実質GDP予測は、2057年には25%減少すると言われていますが、女性活躍など構造改革を行った場合、15%回復すると言われています。
女性活躍が進む米国では、女性リーダーたちの更年期の障害が課題となっていますが、日本でも更年期で悩む女性は多く、退職や昇進辞退を検討する人も少なくありません。更年期障害には、ホルモン補充療法が用いられることが多いのですが、心因性要因もあり、カウンセリングなどの心理療法が奏功する場合もみられます。働く女性の4分の1が更年期世代であることもあり、女性活躍のためには、更年期ケアが大切になってきます。
一方、月経関連の様々な問題を、男性は女性のメンタルヘルスの問題と捉える傾向が見られます。日本企業の健康経営といえば、男性の方が悩みやすいメタボリックシンドローム対策や禁煙支援がポピュラーですが、女性の健康課題は、無意識にニッチ扱いされてしまい支援の対象になりにくくなっています。決定権を持つリーダー層に男性が多いと、自分たちにとっての健康課題を社会全体の課題だと思い込み、無自覚に構造的な偏りが起きやすい状況になっています。
女性の健康問題についても無自覚な偏見がみられます。人種やジェンダーなどの格差の多くは、個人間の差別ではなく、働き方や昇進ルールなどの社会構造によって間接的に無自覚に生まれています。組織において、多様性があるほどイノベーションの発生率も高まるとされています。今後、企業は女性の人材育成に加え、健康や科学の視点をどう経営に入れるべきかが問われています。
(2023年6月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)