日本は、STEM(科学・技術・工学・数学)分野で女性の活躍が著しく遅れています。OECDによれば、STEM分野の卒業生に占める女性の割合は日本は17%であり、比較可能な中で最下位です。女性は理系に向かないといった偏見には根強いものがあります。
技術革新には、取り組む人材の多様性が欠かせません。日本政策投資銀行が過去25年間の特許データを分析したところ、発明者に男女がいる特許の経済価値は、男性のみの特許よりも高くなっています。しかし、せっかく理系の職に就いても、給料などでの男女での待遇差やワークライフバランスの欠如などから、離職するケースも多くみられます。
女性の視点が新たな発見につながる事例もあります。研究においても、これまでオスを前提にデータを蓄積してきましたが、女性の視点から知識を再定義する必要が出てきています。オス中心の動物実験や男性の人体ダミーに基づく安全設計などによって生じた偏りを改めることで、研究開発の質を高め、技術革新につなげる考え方が出てきています。こうした手法は、ジェンダード・イノベーションと呼ばれます。
女性の視点で社会課題を解決するような課外活動やワークショップを増やし、女性が自然に理系分野に触れる機会を増やすことが大切です。
(2023年3月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)