女性初という言葉のもつ意味

 1986年に男女雇用機会均等法が施行されて40年が経過しています。最近よく女性初という言葉が使われるようになってきています。2025年10月に、日本の憲政史上初の女性首相として、高市早苗総理大臣が誕生しました。これまで女性初と言われる方々は、男社会に合わせて働いてきたいわゆる名誉男性であることが多く、男性が持っているものを奪おうとする人ではありませんでした。一方で、男性側は有能な女性を取り立てようとする男性目線で、名誉男性と言われる女性を登用してきました。

 キャリアと出産・育児がトレードオフだった時代を経て、2000年頃には仕事を意欲的にこなすバリキャリという言葉が流行いたしました。その後、子育てと仕事との両立支援が図られるようになり、現在では男性が育休を取り、仕事もプライベートも同じようにこなすフルキャリの女性が増えてきています。このような時代背景の変遷の中で、女性初という言葉がよく使われるようになり、女性が重要なポジションに就くことは大変喜ばしい進歩と思われます。女性初は、それぞれの領域において見えない境界線であるいわゆるガラスの天井を打破し、次世代の女性にその門戸を開くことにつながります。正しく社会の大きな転換点とも言えます。

 しかし、上だけが女性でも後が続かず、陸続と女性リーダーを作り出していかない限り、男性優位の不平等な社会構造は変わらず、女性初が繰り返しニュースになり続けることになります。これまでの女性初には、その裏に潜んでいる問題への考察のないまま、祝賀ムードだけが先行しています。女性初と表現に拘ってきたのは、社会が性差別主義からの解放を期待していたのかもしれません。スーパーウーマンではない普通の女性がリーダーになれるようになった時、初めてジェンダー平等に近づくことになります。女性初の誕生を契機に、人材登用の構造的変革へつなげる必要があります。

 社会がさらなる女性活躍を必要だと考える時、潜在的に根強く残る性別役割分担に関する問題意識を持ち、多様性を認める多角的な視点が大切となります。これまで社会的マイノリティであったとも思われる女性の様々な課題に向き合う姿勢は、性的マイノリティなど他のマイノリティの課題解決にもつながります。安易な女性初報道は、女性の名誉男性化を招き、モチベーションを削ぐことにもなりかねません。女性初が特別なニュースでなくなる社会が一日も早く来ることを期待しています。

(2026年3月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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