先進国では、1970年代まで働く女性が増えるほど、仕事の負担で出生率が下がる傾向が強くみられました。1980~1990年代にデンマークやノルウェーは、女性の労働参加率と出生率が同時に上がりましたが、日本や韓国などは働く女性が増えた結果、出生率は下がってしまいました。現在欧米などの国々では、女性の労働力率が高い国ほど出生率が高くなっています。一方、日本や韓国は、女性の労働参加と出生率向上を両立できていません。
違いを分けたのが企業の支援の考え方です。お金が増えても仕事の成功から遠ざかるなら、出産の意欲は上がりません。北欧は賃金や昇進の男女格差の縮小に取り組み、出産をキャリアの障害にしない働き方改革で出生率回復につなげています。
OECD加盟国の平均で見ると、家事などを含む女性の総労働時間に占める会社での労働時間の比率は4割です。働く女性が、有限の時間を出産・育児とキャリアでいかに両立できるようにするかが大切となります。働き手の私生活を、会社都合でデザインするのではなく、個人の人生設計に寄り添う新たな経営の在り方が求められています。
(2022年11月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)