育児・介護休業法により、女性の育児休業取得率は、2007年以降は常に80%を超えていますが、男性の取得率はまだ5%台にとどまっています。法律は男女労働者を対象にしていても、育児は女性の仕事という構図はほとんど変わっていません。第1子を出産した女性の出産前後の就業状況をみると、結婚して仕事を辞める女性は、均等法施行後徐々に減ってきています。しかし、第1子の出産後も就業を継続する女性の割合は、2010年頃までは20%台で推移していました。結婚した第1子を出産した後も働き続ける女性は、2010年頃から増え始めましたが、それでも4割にも満たない状況です。
経済協力開発機構加盟諸国のデータをみると、概ね女性の労働力率が高い国は出生率も高く、逆に女性の労働力率が低い国は少子化に苦しんでいます。女性が活躍する社会が、同時に希望する子どもを持つことができる社会です。
子どもを持つ女性が仕事を続けるための条件としては、職場全体の勤務時間や両立を支援する雰囲気、勤務時間の柔軟性などです。日本の残業時間は、国際的にみても長く、男性の家事・育児参加の度合いは極めて低い状況です。就学前の子どもを持つ父親の家事・育児時間は日本は、1日平均約1時間強で、欧米の半分以下です。夫の家事・育児参加時間が長い家庭ほど妻の就業継続率が高く、2人目以降の子どもを持つ確率が高いことも分かっています。妻だけが育児を担うワンオペ育児が少子化につながります。そして男性の育児参加には労働時間の短縮が必要となります。女性活躍からスタートして、男女の働き方改革へと広がってきた政策の方向性は間違っていないと思われます。
(2019年1月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)