女性活躍への道―Ⅱ

男女間賃金格差
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、労働の対価である賃金の男女差は、30年間で約23%も縮小したとされています。しかし、女性労働者の教育や勤続年数は上昇していますが、今でも男性労働者の水準には届いていません。人的資本の男女差では説明できない男女間賃金格差を見てみると、高賃金なほど男女格差が拡大しています。その傾向は年々大きくなっています。
以前と比べれば、管理職の女性は公表統計を見ても増えています。しかし、学歴や勤続年数などの男女差をコントロールしたうえで、管理職への昇進確率を計算しても、部長・課長・係長のいずれの職位に関しても、1990年と2015年の両年で男性より女性の昇進確率が低いことに変わりはありません。しかし、女性の昇進確率は、2015年の方が昇進確率は高くなっています。女性の管理職への昇進確率が高まると同時に、昇進に伴う昇給の男女間格差が大きくなっていると考えられます。
女性は、以前より教育や勤続年数を高めて職位も上がっていますが、賃金という処遇の最終段階では必ずしも報われていません。この状況は、swimming upstream現象と呼ばれています。流れに逆らいながら懸命に上流に向かって泳いでも、逆流に押し戻されてしまい最後まで登り切れない状況です。こうした現象は、日本だけでなく米国、英国、カナダでも観察されています。職位などの働き方や仕事の男女差が解消されなければ、労働市場での男女格差が解消されたとは言えません。

(2020年7月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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