女性活躍推進―Ⅵ

クオ-タ制

 クオ-タ制とは、会社役員や議員などに女性を増やすため、一定を割り当てるしくみをいいます。以前より、上場企業の女性役員や女性管理職比率の数値目標の設定が検討されてきましたが、経済団体など企業側の反発により、目標設定の部分は各企業の自主性に任されることとなっています。反発の背景にあるのは、マイノリティ-優遇策が女性労働力の量的拡大を進めるほど、質的に劣る人材を雇用したり、登用せねばならなくなり、結果として組織効率を悪化させることがあげられています。経済団体や企業は、管理職になりたがる女性が少ない中で、モチベ-ションの低い人たちを無理にひきあげてもうまくいかないと指摘しています。
 欧州各国で導入されたクオ-タ制は、女性比率という結果のみを定量的に監視し、結果に至るプロセスは企業に任されています。一方、日本の女性活躍推進法案には、結果でなくプロセスを評価する政策が盛り込まれています。対象企業の行動計画が、女性登用の量的拡大はもとより、ビジネス上の実質的な影響力拡大を図る具体的施策につながっているかを確認する仕組みが不可欠となります。逆差別感による男性のモチベ-ション低下に関しては、少数優遇策から受け入れられるには、正当な理由が必要です。一つは人材の多様化が企業にとってプラスだとする理由であり、もう一つは過去の差別の解消が必要だとする理由です。
スウェ-デンのように、政府が女性比率を規制することは企業の自主性を侵害し、ビジネスにとってマイナスとして、クオ-タ制導入が見送られた国もあります。諸外国はクオ-タ制のジレンマに長年向き合ってきています。この問題は、割合だけでなく組織において資源を動員する力と将来の成功・成長につながる手段や道筋を与えないと解決しないと思われます。

(2015年8月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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