女性議員の産休の必要性

労働基準法は、出産する会社員に産前6週間、産後8週間の休業を定めています。雇い主は、働く人の求めに応じて産前休業を認めなければなりません。産後の6週間は必ず休ませる必要があります。しかし、会社などに賃金を支払われる立場の人が対象で、女性議員らは取得を想定されていません。特別職の議員は、同法に基づく労働者とみなされず、この産休が適用されていません。政治の場に女性を増やすため、女性議員が安心して出産前後に休める環境を整えようとする動きが出てきています。
国会では、2000年に橋本聖子参院議員の出産を機に、参議院規則を改正し、欠席届の理由に出産と明記できるようになりました。2001年には、衆議院でも規則を改正しています。2015年ごろから、地方議会でも見直しが進み、今では8割の市区町村議会で出産を理由に議会を休めるようになりましたが、会期中すべての日程を休めるわけではありません。
子育て世代の女性は、議会に最も代表を送れていない層です。子供を産み育てる当事者の声を、議会にもっと反映させ、地域を暮らしやすくするためにも女性を増やすことが重要です。議員が安心して産休を取れるようにするには、休業中の有権者に対する責任と、意思を示す議会の投票をどう遂行するかを解決する必要があります。
海外では、ニュージーランドで2018年に、首相が6週間の産休を取り副首相が代行を務めるなど、政治の要職につく女性も出産で一定期間休む例が出てきています。有権者も議員の産休を個人の問題としてではなく、地域を住みやすく、活力あるものにするために不可欠な仕組みとして理解すべきです。女性を政治の意思決定の場に増やすきっかけとすることで、社会はよりよい方向へ変わっていきます。

(2021年1月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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