妊娠中にGDMと診断された女性(GDM既往女性)は、将来高率に2型糖尿病を発症することが、40年前のボストンGDM研究で明らかにされています。最近の研究では、妊娠中にGDMを発症しなかった女性に比べてGDM既往女性の将来の糖尿病発症の危険率は7.43倍にもなります。妊娠中にGDMを適切に診断する目的の一つに、この将来の糖尿病の発症を予防することにあります。そのために、分娩後に定期的な血糖検査を行うことが必要です。
肥満、高年齢、糖尿病家族歴、妊娠中のインスリン治療、産後の体重が元に戻っていない、などが糖尿病発症の高リスク群です。このような女性の場合、産後5年で糖尿病発症率が40%にも達することが知られています。
GDM既往女性の糖尿病発症予防のために、定期的な検査とともに、栄養指導や体重指導、日常的な運動、母乳哺育などが推奨されます。このうち母乳哺育には、もっとも効果的な糖尿病発症予防効果があります。母乳哺育によってGDM既往女性の糖尿病発症をおよそ30~40%減らすことが期待されます。
(安日一郎先生の妊娠糖尿病の周産期管理とフォローアップより引用)
(月刊 母子保健 2019年4月号)
(吉村 やすのり)