妊娠高血圧症候群は、妊娠20週から産後12週までの間に高血圧が認められた場合に診断される症候群です。20人に1人の割合で起こり、たんぱく尿を伴う場合は妊娠高血圧腎症と呼ばれます。妊娠5か月頃までに完成する胎盤の血管形成などがうまくいかず、赤ちゃんに十分な酸素や栄養が送れなくなったため、お母さんが血圧を上げて、それをカバーしようとすることによっておこります。酸素や栄養が不足すると赤ちゃんの発育や状態が悪くなり、さらに重症化すると、母子の命にかかわる重大事態に至ることもあります。発症のリスクは、高齢出産や若年出産、母体肥満、初めての妊娠などの場合に高くなります。
収縮期圧が160 mmHgを超えた場合は、重症妊娠高血圧症候群と診断し、安静や降圧薬などによる入院治療を行います。母児の状態が悪くなり、重篤な合併症のリスクが高まった時は、妊娠の継続を諦め、分娩を速やかに終わらせます。分娩後、多くは2~3日で高血圧の症状は改善しますが、重症化して内臓や血管にダメージを受けている人は、慢性の高血圧や腎機能障害になる可能性があります。
(毎日新聞 Anetis秋より)
(吉村 やすのり)