長野県須坂市は、多職種が連携した妊産婦のメンタルヘルスケアを実施しており、須坂トライアルと呼ばれています。平成26年より厚生労働省科学研究「うつ病の妊産褥婦に対する医療・保健・福祉の連携・協働による支援体制構築の推進に関する研究」と須坂市の母子保健事業の協働で、多職種が連携して妊産婦のメンタルヘルスケアを行っています。
この特徴は3つあります。1.妊娠届出時に全ての妊婦に対して母子保健コーディネーターが面接を行って母親との関係性を構築し、また、心理社会的リスクをアセスメントします。2.周産期メンタルヘルスケアについての多職種連携のためのクリニカルパスを作成して地域の母子保健関係者間で共有し、スムーズな多職種連携を行います。3.妊娠期面接などで心理社会的リスクありと判断された親子については、定期的にケース検討会議を行い、顔の見える連携を構築しています。
産後4か月でEPDSの合計点数が、介入群は統計的に有意に低下し、須坂トライアルのプログラムが、地域全体の産後の母親のメンタルヘルスを向上させることが明らかとなっています。新生児訪問を実施できた家庭の割合、両親学級への参加者の割合、保健センターでの子育て相談利用率、産後ケアの利用率、子育ての悩みについての電話相談利用率が、須坂トライアル開始後にいずれも向上しています。
須坂トライアルが親子と保健センターとのつながりをより深くし、母子保健サービスの受療率・利用率を向上する効果があることが示されています。妊娠届出時に、全ての妊婦に対し母子保健コーディネーターが面接を行うことにより、保健師と母親との間に関係性が構築され、その後の親子のサポートに良い影響を及ぼしています。
(2022年3月1日 月刊母子保健)
(吉村 やすのり)