結婚している男女間に生まれた婚外子の遺産相続問題をめぐり、自民党法務部会は条件付き了承との考えを示した。
婚外子に嫡出子と同じだけの遺産相続を認めたら、結果として不倫を助長し、一夫一婦制を危うくし、家族制度が崩壊するとの考え方もある。また、正妻や法的に婚姻した夫婦の子である嫡出子の権利が侵害されるとの意見もある。しかしながら、この議論には生まれた子どもの視点が顧みられていない。生まれた子どもは親を選ぶことができないのである。婚外子が生まれる状況は、婚外子差別が撤廃されたとしても増加するとは思えない。同じような頻度でおこりうるのではないだろうか。一夫一婦制が危うくなることはあるかもしれないが、それは男女カップルの家族観やモラルで判断すべき問題であり、生まれた子どもの権利が侵害されることとは別問題のように思える。
このことは第三者を介する生殖補助医療で生まれた子どもも同様である。精子や卵子の提供を受けて生まれた子ども、代理懐胎で生まれた子ども達は、親を選ぶことはできない。自らの選択ないし修正する余地のない事柄で生まれた子どもが、不利益を被らないような、そして生まれた子どもを第一義と考えるような法制度が望ましいと思われる。
(2013年11月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)