結婚していない男女間に生まれた子である婚外子の遺産相続の取り分を、結婚した男女の子である婚内子の半分とする民法の規定は、「法の下の平等である」ことを定めた憲法に違反すると最高裁の判断が下された。婚外子は「非嫡出子」とも呼ばれ、婚姻届を出さない事実婚のカップルや妊娠したものの結婚には至らずに出産した女性の子どもなど様々なケースがある。
出生による差別を許さないことは、近代法の大原則である。子どもの権利条約をうたった国連の「子どもの権利条約」などを受けて、婚外子差別摘発の動きが広がり、現在欧米諸国ではわが国のように子どもに差別がある国はほとんど存在しない。責任があるのは親であり、何の過失もない子に不利益を与えるのは許されないと考えるのは極めて妥当な判断と言える。
これまで日本産科婦人科学会は、体外受精の実施に際しては婚姻関係のある夫婦に限るとしてきた。それは婚外子の遺産相続における不利益がある以上、学会として事実婚での体外受精を推奨でいないとの理由によってきた。しかしながら、以前は戸籍を確認する子どもの手続きが必要であったが、社会情況の変化も考慮し、平成18年の見解改正で戸籍謄本の手出は義務づけられなくなっている。そのため、実地臨床においては夫婦であると宣誓されたカップルには体外受精が実施されてきていると思われる。今回の最高裁の判断により、日本産科婦人科学会の体外受精・胚移植に関する見解の改正が必要となるであろう。すなわち、「被実施者は婚姻しており、挙児を希望する夫婦で・・・」は「被実施者は挙児を希望する男女で・・・」と変更することができる。子どもの福祉の観点からすれば、両親が婚姻関係にあるか否かより、子どもを慈しみ育てることがより重要である。
不妊に悩むカップルに子どもを提供できるような新しい生殖補助医療のあり方を再考する時期にきている。
(吉村 やすのり)