法制審議会は、結婚や離婚の時期によって生まれた子どもの法律上の父親を決める嫡出推定を見直すよう答申しました。女性だけに課されている再婚制限をなくすことも盛り込んでいます。家族のあり方が多様化するなか、改正されれば、父親を中心としてつくられた明治時代からの決まりが変わることになります。伝統的な家族観を重視する保守派議員からの慎重な意見も出ていますが、リプロダクティブライツ確立のための第一歩です。
嫡出推定は、子どもとの血縁関係を調べることなく、法律上の父子関係を決める制度です。出産した女性の結婚や離婚の時期に着目し、結婚中に妊娠した子は夫の子、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と定めています。明治31年施行の民法に規定され、現在も続いています。
離婚直後に生まれた子どもが、前夫の子となるのを避けるため、母親が出生届を出さず無戸籍となる問題も浮上しています。このため答申では、再婚していれば、離婚の時期にかかわらず現夫の子とする例外規定を追加することとしています。これに伴い、女性に離婚後100日間の再婚を禁じた規定もなくします。このほか、父親だけに認められている嫡出否認の権利を子どもや母親にも広げ、嫡出推定で決まった父子関係を否定する訴えを起こせるようにします。
(2022年2月15日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)