子どもの在宅医療の必要性

 生殖補助医療の進歩により、高齢妊娠が可能となりましたが、それに伴い早産や多胎が増加し、新生児集中治療室(NICU)に入る未熟児が増えてきており、その結果、NICUはいつも満床状態です。新生児治療も高度化し、救命できる未熟児が増えてきており、生まれつきの病気や障害を持っていても救命できるケ-スも多くなっています。こうした体重が少なく生まれたり、生まれつきの病気や障害があったりするこうした子どもの退院後の暮らしを支える動きが広がっています。地域の中核病院と診療所、訪問看護事業所などが連携し、治療が必要な状態でも自宅へ戻れるケ-スが増えています。
 子どもの在宅医療に力を入れる背景には、NICUの満床を防ぐため、早い段階から退院支援をするようになってきています。厚生労働省研究班の調査によると、全国のNICUと回復後に入る治療室に1年以上の長期入院をしている推計患者数は2006年をピ-クにいったん減少しました。しかし、救命率の向上などで10年から再び増加に転じています。在宅医療を受ける子どもは手厚い医療が必要な場合が多く、一般の在宅医が診るためには、緊急時の入院に応じてくれる病院が不可欠です。このような病院が少ないことから、人工呼吸器を必要とする子どもなどが、NICUより退院できない状況にあります。

(2015年8月25日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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