東京大学の山口慎太郎教授らの調査によれば、子どもがいる女性と子どもがいない女性を比べると、子どもがいる女性は10年間平均で賃金が46%下がり、男性の場合は8%上昇しています。男女間の差は子どもがいない場合12~13%程度ですが、子どもが生まれると10年後には47%ほどに拡大しています。
格差の内訳は、出産直後は育休取得や時短勤務によるものが大きいとされています。時間が経過すると、長時間労働が人事評価につながる状況で、女性が役職につけず、手当がもらえないことが大きな賃金格差を生んでいます。子育てとの両立支援で時短勤務など女性の働きやすさを追い求めた結果、出産すると重要な仕事を任されなくなる、いわゆるマミートラックにはまり込んでしまう女性社員が増えています。
2021年の総務省の社会生活基本調査では、6歳未満の子どもがいる世帯の1日あたりの家事や育児の時間は、夫が1時間54分に対し、妻は7時間28分です。女性に偏る子育てペナルティーは、男性も含めた長時間労働の是正など働き方改革そのものに着手しなければ解決しません。

(2025年2月28日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)