子どもの脳死臓器移植

1997年10月に施行された臓器移植法は、2010年7月に改正され、家族の承諾のみで提供できるようになり、15歳未満の子どももドナーになれるようになりました。ドナーは徐々に増えていますが、諸外国に比べると著しく少ない状況です。特に6歳未満の幼児の提供は、これまで計13件に過ぎません。
今年4月には、子どもの脳死臓器移植を題材にしたテレビのドキュメンタリー番組を巡り、ドナーの両親が、病院や執刀医などを相手どり、損害賠償を求めて広島地裁に提訴しました。放映されたのがわが子の臓器とわかり、精神的苦痛を受けたとのことです。この出来事は、一般に意識されにくいドナーの存在を実感させ、それなくして成り立たない臓器移植医療において、ドナー遺族への配慮がいかに重要か警鐘を鳴らしています。
臓器移植の場合、レシピエントにはスポットライトが当たることが多く、支援も集まりやすいのに比べ、ドナー側は孤立しがちになる構図があります。ドナー側の情報は、そもそも少ないため社会に共感が薄く、遺族の立場ならどう感じるか、想像力が及びにくい状況です。報道側は、個人情報やプライバシーの保護には、最大限留意したとしていますが、表現や配慮のあり方については検討が必要です。

 

(2019年6月28日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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