子どもをもつことの意味を考える

 近年、子育て中の親に向けられる周囲の視線が必ずしも温かくないように感ずるようになってきています。身近に子どもがいるのが当たり前である時代ではなくなり、子どもがいる環境に慣れた人が減ってきていることも一因です。女性にとって子どもを産み育てることが唯一の生き方ではなくなり、社会進出が進み、女性活躍が叫ばれ、女性の生き方が多様化してきています。女性の選択肢が増えることは素晴らしいことです。必ずしも子どもは必要ではない、経済的な負担も大きく、むしろ不要と考える若い世代の人は増えてきています。かつての子どもをもつことは家の維持継承といった意識は薄れてきています。未婚化、晩婚化、少子化が進む現在、子どもをもつことへの意味や動機づけを考えねばならない時代になってきました。
 子どもをもつことに限らず、医療、介護、年金などの社会保障制度が今後維持できるかどうかは、若い世代がどれだけいるかにかかっています。子どもは将来財源の調達につながることからも、社会にとってとても重要な存在です。若い世代に子どもをもちたい、育てたいと考えていただくためには、人づくり革命で提唱されたような、幼児教育無償化などの子育て支援策は必須です。一方、子育て支援策は、子どものいない世帯にとっては負担だけが増えることになり、不公平と考える人も現れ、慎重論も出てきます。しかし、様々な子育て支援策は、社会を将来支えてくれる子どもを育てるカップルに対する感謝であると考えてもよいと思われます。子どもがいることによる恩恵は社会全体に及びますから、子育ても社会全体で支援するのが自然です。
 落ち着いた大人ばかりの生活に慣れていると、子どもが騒いだり泣いたりするのはうるさく感じ、不快に思えることもあります。子どもにとっては、泣くのも大切な意志表現の一つです。話すことができない新生児や乳児にとっては、泣くことにより自らの意志を親や周囲の人々に伝えています。子どもの特性を理解するためには、中学生や高校生の頃から乳幼児に接する機会をつくることも大切です。赤ちゃんに接することにより、子育ての素晴らしさを体験してもらうようなearly exposureが必要です。一方、混雑した電車やレストランなど大人のルールが必要な場所では、親自身がまずそのルールをしっかり守ることも大切です。
 子育ては自分育てです。子どもをもつことにより、親は多くのことを学びます。子育ては素晴らしい教育の場です。子育てをすることにより、他人に対して優しくなれます。子育てをするためには、自らの仕事の効率化を図らなければなりません。子育ては社会との交流を増やし、他人を育てるスキルの向上につながります。若い人々が子どもをもちたいと考えるなら、若い世代のカップルに国はあらゆる支援を考えていかなければなりません。今回大きな政策の柱である人づくり革命に対し、問題ばかりを指摘するのではなく、政治との対話の中でより良き政策を引き出すような姿勢が大切です。ようやく芽生えた少子化対策の火を消さないように心掛けたいものです。

(吉村 やすのり)

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