1997年施行の臓器移植法においては、脳死と判定された人からの臓器提供は、事前に本人が書面で意思表示をしていた場合に限られ、提供できるのは15歳以上でした。2010年7月17日に施行された改正法で書面による意思表示が必須ではなくなり、家族の承諾があれば15歳未満からの移植が可能になりました。6歳未満には、さらに厳しい脳死判定基準が設定されています。15歳未満からの臓器提供を可能にした改正臓器移植法執施行から5年が経過しました。日本臓器移植ネットワ-クの集計によれば、臓器を提供した子ども(18歳未満)が、わずか14人だったことが明らかになりました。実際に97人が検討されましたが、病院側の体制が不十分だったり、虐待の疑いがあり見送られたケ-スが多くみられました。
提供しなかった83人について理由を調べたところ、最も多かったのが施設の体制整備が17人でした。子どもの脳死移植にあたっては、虐待の有無を確認するための院内に委員会を設置することや、小児の脳死判定に詳しい医師を配置することが求められていますが、こうした体制が整備されていませんでした。他には、家族が提供を望まないが16人、虐待の疑いが否定できないが10人なども目立ちました。改正法の施行後も、多額の費用をかけて海外を目指す子どもが少なくありません。医療機関は国内での提供を増やすことが必要となります。個々の医療機関に努力を求めるだけでなく、国を挙げた取り組みが求められます。
(2015年7月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)