子宮内膜症とは、子宮の内側にある子宮内膜と似た組織が、おなかの臓器を覆う膜や卵巣など、子宮以外の場所にできる病気です。炎症や癒着を引き起こし、月経のたびに悪化し、痛みや不妊の原因となります。現代の女性は、昔と比べ、初経が早いうえ、出産回数も少ない傾向にあるため、生涯で経験する月経の回数が多く、子宮内膜症になりやすくなっています。
子宮内膜症は、月経がある女性の約1割にみられます。国内の推計患者数は260万人以上、20~30代で発症することが多く、30~34歳でピークに達します。まさに働き盛りの世代に多い病気です。子宮内膜症を疑うサインは、鎮痛薬が効かないほど月経痛が酷い、徐々に月経痛が酷くなってきている、月経以外の時でも下腹部痛がある、性交時に腰が引けるほど痛い、排便の時に痛みがあるなどです。どれ一つでも該当したら、早く婦人科に相談すべきです。日常生活に支障をきたすほどの月経痛がある月経困難症の人は、その後子宮内膜症になるリスクが2.6倍高いという報告もあります。
治療には、ホルモン剤で子宮内膜症の組織の増殖を抑えて症状を和らげたり病巣を小さくしたりする方法と、病巣や癒着部分をとる外科手術があります。初期のうちはホルモン剤で症状もコントロールしやすいのですが、手遅れになる前になるべく早く婦人科を受診し、継続して治療を受けることが大切です。月経困難症がある場合は、ピルの服用が奨められます。ピルを飲むことにより、月経痛や月経量は半分以下になります。こうしたピルの服用は、QOLの改善のみならず、子宮内膜症の予防につながります。
(2020年3月12日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)