子宮移植を考える―Ⅰ

臨床応用の現状
子宮移植は養子縁組、代理懐胎に続く第三の選択肢として、海外では2000年代から試みられてきました。スウェーデンや米国などで計40例の出産が報告されています。子宮がない女性の出産を可能にする生体からの子宮移植について、日本医学会の検討委員会が臨床研究の実施を認める報告書をまとめました。計画を進めてきた慶應義塾大学のチームが開始に向けた手続きに入ることになっています。

患者の救命とは異なる出産という目的のために、提供者が多大なるリスクを背負う移植医療が許容されるのかが大きな問題となっています。海外では、3月までに報告された85例中63例が、健康な人から子宮を提供してもらう生体移植です。他22例は脳死の人からの提供です。現在、わが国でも生体移植は肝臓や腎臓で多数行われています。しかし、いずれも生命維持に欠かせない臓器であり、子宮とは根本的な違いがあります。
移植医療は脳死と判定された人がドナーになるのが基本です。臓器移植に関する国の指針には、生体移植はやむを得ない場合に例外として実施されるとあります。現在、子宮は脳死移植の対象になっていないため、報告書はその法令の改正を求めつつ、実現には課題があり時間もかかるとして、生体移植の容認の判断に至りました。将来認められたとしても、国内では脳死の人からの臓器提供が少なく、計画的な手術は難しいとも思われます。

(生命倫理を考える ― 生殖医療の進歩の中で ―)
(吉村 やすのり)

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