子宮頸がんと体がん
日本の子宮頸がんの好発年齢は、1983年は50代以降でしたが、その後の若年症例の増加に伴って、2013年には30~40代にシフトしています。好発年齢が若年世代となると、当然、妊娠や出産との兼ね合いが問題になります。つまり、妊孕性を温存する治療や手術を求められるケースが非常に増えているということです。子宮頸がんはウイルス感染により発症するタイプのがんです。そして、その原因ウイルスはHPV(ヒトパピローマウイルス)であることが知られています。HPVは非常にありふれたウイルスで、性交渉の経験のある女性の約8割が一度は感染したことがあるとされ、感染自体は特別なことではありません。多くの場合は感染しても症状のないうちに自然に排除されます。
HPVには多くのタイプがありますが、そのうち子宮頸がんを引き起こす率の高いハイリスク型のウイルスは、13種類程度と考えられています。中でもHPV16型と18型はがん病変から検出される頻度が非常に高く、この2つのタイプで子宮頸がんの原因の約7割を占めています。子宮頸がんは、HPVの持続感染により、異形成(がんになる前の状態)を経て浸潤がんに至るということが明らかになっています。HPV感染から発がんまでの期間は、5~10年ほどと考えられています。
(よぼう医学2018 autumn)
(吉村 やすのり)