子宮頸がんシリーズ―Ⅳ

HPVワクチン接種の必要性
 HPVワクチンは世界100カ国以上で認可され、60カ国以上の国のワクチンプログラムに組み入れられています。日本では、20134月から定期予防接種となりましたが、慢性疼痛と運動障害を中心とする有害事象に関する多くの報道がみられるようになり、20136月に厚生労働省が本ワクチンの積極的な接種勧奨を中止しました。その後現在に至るまで接種勧奨中止の状態が続き、本ワクチンの接種率は著しく低い状況が続いています。日本産科婦人科学会をはじめとする学術団体からは、早期の勧奨再開の要望が出されていますが、事態の解決の徴しは見えておらず、日本における特に若年層の子宮頸がん罹患率・死亡率の増加が懸念されています。
 現状の日本のHPVワクチン副反応問題の多くは、国民にHPVワクチン接種のリスク・ベネフィットの正確な情報とともに、ワクチンと一連の副反応の因果関係が証明されていないといった事実が伝えられていないことに起因しています。またHPVワクチンの有用性に関する海外からの重要なデータの情報が伝わっていないことも関係しています。日本でこのままHPVワクチン接種率低迷が続けば、今後多くの女性がHPV16/18型感染の危機にさらされ、若年者の子宮頸がん罹患率・死亡率の増加に歯止めがかからないことが大いに懸念されます。こうした状態を打開するためには、ワクチンの効果と安全性に関する行政・医療・教育・研究関係者およびメディア関係者などのリスクコミュニケーションが極めて重要であると思われます。

(吉村 やすのり)

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