アジュバントとは、ワクチンの免疫原性、つまり免疫を引き起こす力を高めるために用いられる添加物のことです。ジフテリアトキソイドを沈降して精製する目的で、アルミニウム塩(アラム)が用いられた際、たまたま免疫原性が高まることがわかり、それ以来ワクチンを作製する際に、アジュバントが使用されています。子宮頸がんワクチンには2種類あり、GSKのサーバリクスにはAS04と呼ばれる「アラム(500μg)+MPL(50μg)」の混合アジュバントが、MSDのガーダシルにはアラム(225μg)の単味アジュバントが使われています。2つの子宮頸がんワクチンで使われているアジュバントは、種類も量も異なっています。サーバリクスのAS04アジュバントはB型肝炎ワクチンに使われているものと、ガーダシルのアジュバントは3種混合ワクチンにも使われているものとそれぞれ同じです。
また2つの子宮頸がんワクチンの本体はいずれもヒトパピローマウィルス(HPV)のL1抗原ですが、サーバリクスは昆虫細胞で、ガーダシルは酵母菌で発現させています。サーバリクスは2種類、ガーダシルは4種類のHPV感染を予防する効果があります。2つのワクチンは全く別の製剤と考えられます。しかし、ワクチンの副反応と言われる症状の発生率は、サーバリクスとガーダシルで有意差がありません。また、同じアジュバントが使われているB型肝炎ワクチンや3種混合ワクチンで、子宮頸がんワクチンと似たような症状が起きているという報告もありません。これらのことから、アジュバントが子宮頸がんワクチンの副反応と言われる症状の原因となっていることは考えにくいと思われます。
(Wedge vol28,No.4より)
(吉村 やすのり)