厚生労働省研究班は、子宮頸がんワクチンの接種後の痛みや運動機能障害などの副反応の発現に、HLA型が関与しているかもしれないとの研究成果を発表しています。HLAとは、すべての細胞の表面にあるたんぱく質で、ヒトの免疫システムが自分の体と外からの侵入者を見分け、外敵を攻撃するための目印の役割を果たしています。HLAを構成する遺伝子は複数あり、それぞれのHLA型は、糖尿病やベ-チェット病、川崎病などさまざまな病気の罹りやすさと関係するとされています。
厚生省研究班に加わる鹿児島大のグル-プは、接種後に手足の痛みや記憶障害などが出た12~19歳の少女12人の血液を採り、HLA型を調べています。その結果、HLA-DPB1と呼ばれる遺伝子が0501という型だった患者が11人(92%)に上り、免疫異常による脳炎などを起こしているとしています。0501は日本人に最も多い型ですが、HLA型が副作用に関連している可能性があるとしています。しかしながら症例数はわずか12人であり、まだ確定的なことは言えず、医学的なエビデンスに乏しいと思われます。子宮頸がんワクチンの副反応は心身の反応との見解がまとめられていますが、こうした新しい研究成果も得られており、症例数を増やして臨床研究を進めるべきだと思われます。副反応のでなかった同年代の対照群との比較が、何よりも大切です。
(2015年7月4日 毎日新聞)
(吉村 やすのり)