国は、ネウボラの考え方を取り入れた子育て世代包括支援センターの設置を2017年度から自治体の努力義務としています。産前産後の親子を継続的に支援する仕組みで、母子保健部署と関連部署をつなげ、助産師や保健師らが連携し、妊娠期から就学前まで一つの窓口で支援します。2020年4月時点の設置状況は、全国1,741自治体のうち1,288に上っています。自治体版ネウボラと称するセンターも多くなっています。
ネウボラとは、フィンランド語で助言の場を意味し、産前産後の家庭を継続してサポートする制度です。各家庭に担当保健師が付き、父親を含む家族全体への継続支援で信頼関係を築いていくのが特徴で、親子と行政を1本の強い絆で結び、問題を早期発見し解決する取り組みです。
厚生労働省の2019年度統計によれば、児童虐待の加害者の割合は、実母が47.7%に対し、実父が41.2%でした。児童相談所での相談対応件数が年々増加の一途をたどるなか、実父の割合も2010年度から16.4ポイント上昇しています。父親による虐待の対応が急務です。大規模自治体でも、各家庭に担当者を置くというネウボラのエッセンスを取り入れる動きも見られるようになっています。
(2021年4月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)