子育て支援が手厚い国ほど、出生率も高まる傾向がみられます。経済協力開発機構(OECD)が、子育て支援を中心にした家庭向けの政府支出を比べたところ、日本は国内総生産(GDP)比で1.0%にとどまり、OECD平均の2.3%を下回っています。出生率が2を回復したフランスは3.2%で、その他の欧州諸国も英国が3.8%、スウェ-デンが3.7%、ドイツが2.1%など、日本を軒並み上回っています。子ども手当や育児休業手当などのほか、託児所など保育施設の充実に多くの予算を投じていることによります。
一方、年金と介護に投じる高齢者向けの支出は日本が10.4%と、OECD平均の7.3%を大きく上回っています。高齢化率など人口構成の違いはあるが、若者よりも高齢者に比重を置いていることが分かります。日本の財政状況は大変厳しい状況にありますが、子育て支援を手厚くするには高齢者向け支出との調整が欠かせません。高齢者に偏重している支出を子育て世代に向けなければ、出生率が増ないということは、海外のデ-タを見ても明らかです。
(2015年7月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)