筑波大学などのチームは、狙った遺伝子を効率良く改変できるゲノム編集技術の安全性を高め、血液の難病を治療する手法を開発しました。血液の元となる造血幹細胞をゲノム編集した後、正常に改変できた細胞だけ選んで患者に移植することで、改変がうまくいかなかった細胞の移植を防ぎます。造血幹細胞から正常な血液細胞ができない難病である重症複合免疫不全症(SCID)や鎌状赤血球症などは、遺伝子の異常が原因で発症します。
患者から取り出した造血幹細胞の遺伝子をCRISPR/Cas9で正常なものに改変し、体内に戻します。しかし、狙い通りに改変できる細胞は2~3割ほどで、一部は間違った遺伝子が改変されるなど安全上の課題がありました。チームは、SCIDのマウスから取り出した造血幹細胞の遺伝子を改変し、細胞1個1個を特殊な培地で培養して数万~数十万個の塊に増やしました。細胞塊だけを元のマウスに移植すると、正常な血液細胞が作られ、免疫機能も回復しました。
(2023年7月17日 読売新聞)
(吉村 やすのり)