官僚による国会議員の質問取り

質問取りは、省庁職員が国会で質問に立つ議員から事前に内容を聞き取る慣習です。政府答弁を作成するために、議員の事務所へ出向いて詳しい内容を聞く場合が多くなっています。コロナ下で政府が企業に在宅勤務を求める状況でも、大勢の官僚が質問取りや政策説明のために議員のところへ出かけています。与野党は、官僚による国会議員への質問取りについて、対面形式をできる限り自粛することで合意しています。

省庁は、質疑前夜でも質問の詳細がわからず、答弁の準備が終わらないケースが少なくありません。政府の公式見解となる国会答弁の作成には、入念なチェックが必要で、担当する官僚は、深夜や未明まで残業を強いられています。閣僚が必要以上に細かい想定問答を求めれば、担当職員は質問取りに追われてしまいます。
コンサルティング会社のワーク・ライフバランスが、2020年に現役の国家公務員を対象にした調査によれば、4割近い人が1カ月に100時間以上の残業をすると答えています。この残業時間の多さが、霞が関の若手職員の退職が増える要因とされています。与野党が合意に沿って、質疑2日前までに遠隔で質問通告すれば、霞が関の負担は軽くなります。

コロナ禍を機に、接触を減らすため電話やオンラインに切り替えれば、議員は地元からでも対応できます。通告時間の厳守とあわせて霞が関の長時間労働の改善につながります。

(2021年1月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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