中央省庁は、民間と比べて低水準の給与や長時間の勤務などからブラック霞が関と揶揄されています。人事院が実施した国家公務員イメージ調査でも、商社やコンサルティング、金融機関に比べて見劣りしています。特に就職前の20代の学生では、仕事のやりがい、待遇、スキルアップや成長機会といった項目でプラスの評価が少なくなっています。若年層が国家公務員の仕事に持つイメージと実態の間にギャップがあり、ブラックの印象が先行しています。
人事院が2025年度に総合職で採用した職員800人弱を対象に実施したアンケートに、公務員離れを防ぐ手立てのヒントがあるかもしれません。志望理由として、公共性が73%、仕事のやりがいが54.8%、スケールの大きさが53.8%で上位にあがっています。まず現場内で自分たちの仕事の価値を言語化することにより、外にも魅力を伝えられます。公務員のブランディングの確立が必要となります。
人事院のアンケートによれば、学生が国家公務員以外を選ぶ決め手は、給与など勤務条件の良さが6割を超えています。平均年収の官民格差は大きく、帝国データバンクの調査によれば、東証プライム上場企業は763万円です。キャリア官僚は人事院の俸給表をもとに算出すると約673万円でした。国家公務員が唯一無二の価値を持つ職業だというナラティブが浸透しない限り、長期的に人材を確保することはできません。
(2025年8月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)