がん細胞の遺伝情報を調べて治療薬を探すがん遺伝子パネル検査が始まって3年が経過しました。小児がん患者でも同検査で薬が見つかり、治療が良い方向に進むなど一定の効果が出ています。しかし、薬が見つかっても成人しか使えないといった現状があり、実際に治療が進む患者はまだ多くありません。また小児向けのパネル検査の開発などの課題も残されています。
2019年6月から公的医療保険が適用され、検査の一部はまだ保険適用を目指す途中で、全額自己負担のタイプもあります。保険適用後、15歳までの患者687人が今年4月までに検査を受けています。国立がん研究センターの研究では、128人の3割に薬の候補が見つかっています。
神経芽腫、横紋筋肉腫、肝芽腫、脳腫瘍など、小児は希少ながんが多くみられます。現在のパネル検査は、肺や胃など大人のがんを対象にしたものが多く、小児特有のがんや血液がんに合致したものが少ないのが現状です。薬の候補がある遺伝子に変異があっても、国内では未承認の薬や、小児は対象外の薬が多く、薬が使えない事態に陥っています。
小児の数の少ないがんでは、年間に新規患者が30人以下など市場規模が小さいため、製薬企業にとっては開発コストに見合う利潤が見込めません。海外では、小児患者の治療を支援する法整備が進んでいます。日本はその潮流にも送れています。しかし、厚生労働省も、大人の治験に小児を組み入れる想定や、成人対象の薬の使用を考慮できる小児の年齢に言及するなど、環境は変わりつつあります。
(2022年7月23日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)