小児の遠隔治療の拡大

子どものオンライン診療に取り組む医療機関が増えています。ぜんそくやアトピー性皮膚炎など、継続的な治療・相談が必要な病気の再診患者を対象にするところが多いのですが、最近は急な発熱など初診患者に対応する診療所も現れています。受診頻度が高い子どもを持つ親にとって、通院の負担が大きく軽減されます。
利用する患者は、診療アプリケーションにアカウントを作成します。クリニックに電話して受診する日時を予約したら、アプリ上に健康保険証の画像をアップロードし、問診票に入力します。利用する薬局も指定しておきます。予約日時に担当医とのビデオ通話で診察を受けます。処方箋は指定薬局にFAXなどで送られ、薬は後で受け取ります。医療費はクレジットカードで決済します。子どもを連れて移動する必要がないので楽で、時短になります。
主治医以外の専門医に治療法に関する意見を聞くセカンドオピニオンでも、オンライン対応が広がっています。難病や重病の子どもに高度医療を提供する国立成育医療研究センターは、2020年に開始しています。小児がんや心臓病など多くの疾患の相談に応じています。年200件前後のセカンドオピニオンを求められ、2021年度はオンラインが約4割を占めています。子どもの表情や体のサイズ感などが分かる写真や動画を提供してもらうと判断に役立ちます。
オンライン診療で留意すべきは、医師が患者から得られる情報が対面診療よりも少ない点です。触診や打診、心臓や肺の音を聞く聴診はできません。患者側もこうした限界を理解した上で、対面診療と組み合わせて上手く受診する姿勢が必要です。患者負担は対面診療よりも割高になる例が多くなります。オンライン診療は、システム費や通信費がかかる一方、国が設定した診療報酬は対面診療よりも安く設定されています。このため医療機関の大半が、患者に診療報酬とは別に追加費用を求めています。
初診患者のオンライン診療に対応する医療機関はまだ少なく、継続的な治療・相談が必要な喘息やアトピー性皮膚炎、夜尿症などの再診患者に限定しているところが多くなっています。育児負担の軽減という社会的ニーズの大きさから子どものオンライン診療は広がる機運があります。子どもは体調の変化が素直に見た目に出るので、大人と比べてオンライン診療をしやすいとの見方もあります。

(2022年11月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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