小児肝炎の増加

肝炎は、何らかの原因により肝臓に炎症が起き、肝臓の細胞が破壊されている状態です。肝炎で代表的なのは、A~E型の五つあるウイルス性肝炎です。中でもB型肝炎とC型肝炎の患者は、国内に約49万人と推計されており、ウイルスに感染しているのに気づかない人も多くいるとみられています。ウイルスなどから体を守ろうとする免疫が何らかの原因で過剰に反応し、自分の肝臓を攻撃する自己免疫性肝炎もあります。
全身の倦怠感や黄疸、食欲不振などの症状が出ます。肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれ、障害があっても、自覚症状が出ないこともあります。肝炎が急激に悪化し、急性肝不全になると意識障害などが出て死に至ることもあります。
急性肝不全になった場合、意識障害をおこす有害物質を除くために血液を浄化する治療のほか、ウイルス性であれば抗ウイルス剤、自己免疫性であれば免疫の暴走を防ぐ免疫抑制剤を投与します。治療に反応しない場合は、肝移植に至ります。肝炎は成人の患者が多いのですが、子どもにも発症します。
今春、欧米からWHOに対し、原因不明の小児肝炎の報告が相次いでいます。その後、昨年10月~今年7月までの間に推定患者も含め、日本を含む35カ国から1,010人の報告がありました。このうち、肝移植に至る重症化した子どもは46人、亡くなった子どもは22人にのぼっています。日本では毎年10~20人の子どもが、急性肝不全が原因で肝移植を受けています。

(2022年10月3日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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