物価高などに伴う経済不安の中で、個人消費を巡る環境が、流動化しつつあります。人口増の時代に成長してきたセブン&アイ・ホールディングスやイオンに成り代わり、新たな消費のけん引役が台頭してきています。総合型小売りチェーンのドン・キホーテやロピア、大手ディスカウントストアのオーケーの躍進が顕著です。
この新御三家は、人口減が顕著になってきた2010年代から出店ペースが加速し、全国的な店舗網づくりに動いています。ドン・キホーテを運営するPPIHは、2014年度に267の国内店舗数が2024年度に632にまで拡大しています。ロピアは2014年2月期に26店舗でしたが、2024年2月期には89にまで増えています。オーケーの出店数も2015年以前は年4~5店でしたが、今は10店前後です。
成長の理由の一つがデフレです。少子高齢化と人口減などが重なり、需給ギャップがなかなか解消しません。経済成長への期待も薄い中、価格競争力のある3社が消費者の支持をしっかりと掴んでいます。消費者の低価志向は強く、成長の余地が大きくなっています。3社とも通常の低価格チェーンではなく、独自の売り場・商品づくりを進め、多様化する消費者志向に対応しています。 今後、セブンやイオンのような与党系チェーンは勢いを失いつつも、生活インフラの中心として残ります。一方で、地域密着型、ディスカウントストア型、独自モデル型などがさらに幅をきかす、多極化した勢力図に塗り替わっていくと思われます。
(2024年11月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)