国際連合は、2019年に世界人口は、2100年までに約109億人まで増えるとの予測を示しています。予測が上振れした場合、156億人まで増える可能性もあるとしています。世界各地で起こっている現象は、下振れルートをたどる確率が高まっているように思えます。国連の推計によると、人口増が続くアフリカは直近5年間の出生率が4を上回っているものの、アジアや中南米はかろうじて2を上回っているに過ぎません。今後、世界が警戒しなければいけないシナリオは、爆発的な人口増から急速な少子化に転換したとの指摘もみられるようになっています。
少子化が進んでも、すぐに経済への影響が出てくるわけではありません。しかし、出生数の落ち込みは、将来の労働人口の減少につながります。そのスピードがあまりにも速すぎると、経済成長を続けるのが難しくなり、社会保障制度など、国の仕組みを維持できなくなってしまいます。
コロナ禍の影響は、2021年の出生率をさらに下押しする形で表れます。人口減でも低成長に陥らないためには、生産性の向上が大切です。しかし、日本の生産性を示す代表的な指標である1人あたり国内総生産(GDP)は、1995年頃から伸びていません。少子化による経済の落ち込みを食い止めるためにも、稼ぐ力を高めることが急務となってきます。
(2021年6月25日 読売新聞)
(吉村 やすのり)